Alfa Romeo – 164 Quadrifoglio

 今でも忘れません、初めて164QVを乗ったときのことを・・・。低速から涌き出てくるようなトルク、尚且つ高回転まで一気に吹けあがるレスポンス、本当に3リッターのエンジンなのか!しばらくしてからです、夢中でハンドルを操作している自分に気がついたのは。

 アルファロメオ164QV。この車を手に入れると言う事は、この量産エンジンとして類をみない最高のエンジンを手に入れるということなのです。誤解を恐れないで言うと、あとはオマケです。ここで私が言うところの最高のエンジンとは、スペック的に何百馬力あるとか、何百km/hのスピードが出るとか、そんなチンケなことではありません。そんなものはオプション小僧にでも任せておきましょう。挑発し、そそのかし、そのたらしこむような色気で乗り手を虜にさせる、この車無しには生きていけない!そんな官能的なエンジンのことを言っているのです。

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 アルファロメオの歴史から言ったら、新しいエンジンといっても良いこのV6エンジン。155V6に搭載されていますが、当時の広告やインプレッションにはやたら「伝統のV6エンジン」と書かれていて苦笑していました。「伝統の~」と言うしかイタリア車を形容する言葉がないのでしょうか?いいかげんうんざりします。

 このV6エンジン、最初はアルファ6というトップモデルであるセダンに搭載されました。2500cc、SOHC、キャブレターのこのエンジンは、アルフェッタGTの発展型であるGTV6/2.5でインジェクション化されます。個人的に乗っていたことがあるのですが、アルファロメオは4気筒!と思っていた私に、やっぱりマルチシリンダー最高!と言わせるほどご機嫌なエンジンでした。
 なにがそんなにいいかって?やはり、フィーリングですね!88×68.3㎜という超ショートストロークのこのエンジン、アクセルレスポンスが最高なんです!けしてトップスピードは速くありませんが(当時私が高速道路でメーター読み210km/hまでは出ました)、レッドゾーンまで上り詰めていく感じが昇天!といった感じなのです!そのうえエキゾーストノートが涙が出るほどいい!4気筒の低音の効いた音もいいのですが、当時のF1にも似た高音の効いた排気音に私は完全にノックアウトされました。遠くからでもすぐにこの車だ!と、分かるんですから。

 164QVのエンジンは、2500ccから3000ccに排気量アップされています。同じエンジンがSZにも使われていますが、走らせると随分性格の違うエンジンに感じます。SZのエンジンは、まさにGTV6/2.5のエンジンフィーリングなのです!164QVと比較すると低速トルクは意外とありません。パワー感も164QVのほうがあるくらいです。それでも回っていく感じは一切の雑味がなくまさに綺麗に回っていきます。

 164QVのエンジンは、低速からトルクが出ていて雨の日にラフなアクセル操作をすると簡単にホイールスピンをしてしまい、不意をつかれたドライバーは、ちょっと恥ずかしい思いをすることになります。街中では、そのトルクのお陰であまり回転を上げなくても結構なスピードで走ることができます。本当に、このエンジンを味わうにはやはり高速道路へ行かなければ難しいでしょうか。

 164QVが販売されていた当時は、イタリア本国ではまだ触媒の装着義務がなく、日本には輸出するために触媒をつけて入ってきています。あまり大きな声ではいえませんが、この触媒をストレートにするだけで、さらにこのエンジンは豹変します!触媒がついているときは、力持ちだけどジェントルマンなのですが、触媒を外すと常識の通じないボブサップになってしまいます!とにかくアクセルを踏みつづけるのが難しい、切れた走りになります!個人的には、触媒を外して本来のポテンシャルを体験して欲しいですね。

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 このへんでエンジン以外のことにも触れておきましょう。発表当時は、このデザインがアルファロメオらしくない!と随分言われました。私もそんな中の一人でした。10年以上が経った今、あらためて見てみるとなんてカッコイイデザインなんでしょうか!本当にそう思えるのです!10年たって気がつくなんて、私も偉そうなことはいえませんね。
 内装にも他の164とは明確な差別化をしています。私が当時乗っていたGTV6/2.5にも取り入れたのがステアリングやセンターコンソールの赤のステッチです。たったこれだけで、本当にカッコイイんですから、降参するしかありません。GTV6/2.5ですが、内装までは無理なので、当時MOMOから出ていたCORSEと言ったかな?赤いステッチのはいったステアリングをつけて雰囲気を出していたっけ。

 エアコンのフラップモーターが壊れると、ダッシュボードを下ろさなければ作業が出来ない為に工賃だけでも20万円以上かかるとか、減衰力切替式のショックが壊れると、1本10万円近くかかるとか、ステアリングラックが壊れるとか、色々ある164QVですが、そんなことは気にしないで下さい。エンジンが絶好調なら後のことには目をつぶりましょう。

 そのかわり、エンジンが調子悪いのだけは絶対にダメですよ!特にこのエンジンは、ご存知のとうり、吸気側のバルブを直接カムシャフトで駆動し、排気側のバルブはロッカーアームで駆動すると言う、半DOHCのようなエンジンですから、定期的なタペット調整が必要です。これをサボるとカムシャフトまでも交換しなければならなくなり、お金もかかります。購入するときは、タペット音をちゃんと確認しましょう。

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 スピードでは、最近の156には敵わないかもしれません。でもエンジンのフィーリングは、156GTAに負けません、いや勝っていると思います。164QVを知らずしてアルファロメオV6エンジンを語るなかれ!理屈では語れない車、リアル イタリアン カー、それがアルファロメオ164QVだと、私は信じています。