PEUGEOT – 106 RALLYE 16V/S16

 ついに生産の終了が決まってしまった106シリーズ。いつかこの日がくることを覚悟していましたが、ついにこの日がやってきました。ロッソコルサにおいて、販売台数ナンバーワンの車なだけに何とも残念でなりません。もちろん、生産が終了してもロッソコルサは106にこだわっていきますのでご安心を!

 ここ数年来のスポーツ走行ブームにおいて、フランス車の中で圧倒的猛威を振るっているのがプジョー106S16です。元々軽いボディに、必要充分なパワーのエンジンを武器に、サーキットではやんちゃぶりを発揮しています!特に、筑波サーキット1000、2000のようなテクニカルコースでは、パワーで圧倒的に有利な車に一泡吹かせることもできるくらいです!

 その反面街乗りでは、そのコンパクトなボディのおかげで女性にも非常に取りまわしがしやすく、高速道路ではそのサイズから想像する以上に安定した走りを提供してくれる、まさに「街乗りからサーキットまで!」次元の高い走りを約束してくれるロッソコルサ好みの車です!又、最近では少なくなった左ハンドル、マニュアル車というところも見逃せません。

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 1600cc、DOHC、118PSのエンジンは、スペックだけをみてもたいしたことはありません。でも一度乗って、アクセルを踏みこむと呆気ないほど期待を裏切ってくれます!低速でも、けしてトルクが薄いわけでもなく、4000rpmを超えた辺りからあきらかにパワー感が増し、5000rpmを越えた頃には本性を露にします!レッドゾーンまで一切のストレスなしに上り詰めていく、このエンジンを味わえるのはオーナーだけに許された特権です。

 96年から98年モデルまでの前期型の内装は、基本的にはファブリックになっていて、ブラックを基調にブルー系と茶色系の模様が入った2種類があります。99年からはブラックレザーとバックスキンのコンビになっています。又、外観もボディサイドにブラックのプラスチックモールがついていたものが、99年式からラリー16Vと同じものになりました。

 途中からメーターもホワイトメーターに変り、油温油量計が、針が動くアナログタイプから走行距離と同じデジタルタイプになっています。XSIにも採用されていたアナログタイプの油量計はよく壊れたのですが、S16では基盤が改善され随分信頼性が上がったようで、ほとんど壊れなくなりました。他にもエアバックがデュアルになったり、室内側のドアオープナーや吹き出し口のツマミがブラックからシルバーになったりと、最終モデルまでに年式によって細かい変更を繰り返してきました。

 106シリーズ共通のウイークポイントですが、エンジンロアマウントが経たってくると、スポーツ走行時に、エンジン前後の揺れを押さえきれず、動きが大きくなることでシフトが入りずらくなったり、ギア抜けすることがあります。ひどい場合、アクセルのオンオフで、ガクンッとすごい音がするほどです。交換することで改善できますが、当社では、強化品をお勧めしています。これはノーマルマウントよりも揺れを押さえる効果が高く、長持ちします。これに交換すると、シフトの入りはかなり改善されます。デメリットとしては、アイドリング時の振動が少し大きくなりますが、今まで我慢できないとノーマルに戻されたのは、一人の方だけです。さらにハードな走りには、プジョースポールの強化マウントが手に入りますので、3箇所とも交換することでかなり良くなります。

 S16になってから採用されたのですが、クラッチワイヤーが自動調整式になっています。これもウイークポイントのひとつで、走行距離に関わらず、クラッチ操作時に違和感が出ます。これは、XSIやラリー1.3に使用されていた手動調整式のワイヤーに交換することで改善できます。ロッソコルサでは、納車時に全車交換して御納車しています。ちなみに2001年モデルからは、手動調整式に変更されています。見分ける方法としては、車台番号を見れば判別できます
VF31CNFXE~ 自動調整式
VF31CNFXF~ 手動調整式
※ちなみに、EとFの違いはミッションの違いです。若干ですが、ギア比がかわっています。

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 さて、ラリー16Vですが、ラリー1.3の時と違いレギュラーモデルであるS16との差は、特別な変更点はほとんどありません。ただし、当社ではよりパワフルになったエンジンを生かすために、ABSをレスオプションとし未装着で輸入しています。これがさらに数10kmgの軽量化に貢献しています。さらにスポーツ走行を楽しまれる方にはABSに邪魔されないで走れることも軽量化以上に重要なことではないでしょうか。

 細かいことを言うと、内装が低いグレードのファブリックになり、電動ミラーを廃止するなどで差別化をはかっています。初期のラリー16Vでは、ドアミラーのカバーや、アウターオープナーなどが未塗装でしたが、現行モデルでは塗装がされています。

 ホイールもS16と同じ純正アルミと、ラリーの定番とも言えるホワイトに塗られたミシュラン製スティールホイールが選択できます。普通はアルミホイールを良しとする方がほとんどだと思うのですが、ラリーの場合は、ほとんどの方がスティールホイールを選ばれます。ちなみに、ラリー1.3のときは5.5J×14インチでしたがラリー16Vでは6J×14インチになっています。余談ですが、アルミホイールからスティールホイールに交換する場合、専用ボルトとセンターキャップが必要になります。

 日本に輸入されたラリー16Vのほとんどがホワイトです。これは205ラリーからのイメージなのでしょうが、95%がホワイトと言っても過言ではありません。

  S16ではほとんどホワイトがなく、98年頃のセリエスペシャルと最終モデルのLTDに若干ですが存在します。たまに見かけますが、ラリーステッカーを貼ったラリールックのS16もあります。


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 日本導入は遅かったのですが、本国では91年頃から販売されている106シリーズの最終進化形とも言えるS16、ラリー16V。サイズ、パワー、バランス、軽さ、そしてそのデザイン。小型車と呼ぶには少し大きくなってしまった最近の小型車の中で、真の小型スポーツカーと言えるのではないでしょうか。

 色々能書きを言ってきましたが、この車の最大の魅力は、純粋に走らせて楽しい!この一言に尽きます!
 気をつけなければいけないのですが、峠では、フットワークの良さを存分に堪能出来るのですが、リアの足回りがトーションバーだと言う事を頭においておかなければなりません。基本的にストロークが少ないため、リアの限界を超えるとスパッとお尻が出ます!
 私もお客様を乗せての試乗中にスパッと流れて、一瞬、血の気が引いたことがあります。平静を装う私の横で、お客様は喜んでいらっしゃいましたが、さすがにあの時は肝を冷やしました。もちろん、限界が低いというわけではなく、限界を超えた時が手強いと言う事です。限界の範囲で乗っているぶんには、誰でも楽しめる車です。

 106S16、ラリー16V。どちらがお勧めですか?と聞かれると、答えは貴方自身の好みでと言うしかありません。ホワイトのボディカラーがいやならS16に、拘って乗りたいのであればラリー16Vに。
 一生に一度は乗っておきたい車、そう断言させていただきます!