FIAT – Barchetta

 124スパイダー以来、久しぶりにフィアットから送り出されたオープン、2シーターのバルケッタ。

 さすがにFRではなくてFFでの登場となりましたが、その出で立ちはイタリア車ファンには充分過ぎるくらいのインパクトがありました。何と言っても、これぞイタリアンデザインと言わんばかりのシルエットは、近代イタリア車のデザインコンセプトに従い、新しさの中にも伝統を散りばめたキラッと光る宝石のようです。

 個人的にグッときてしまったのがドアオープナーです!レーシングアバルトのそれをそのまま取りつけてしまうなんて、やられた~と思ったのは私だけではないでしょう!

 又、綺麗に格納出きる幌も、最高の見せ場であるオープン時での視覚効果をあげています。

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 デザインは最高ですが、走りはどうでしょうか?

 特に新しいデバイスは一切ついていません。確かに、必要最小限の装備だけで充分だとは思いますが、どんな走りを提供してくれるのでしょうか?

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 走り出してすぐに気がつくのがボディ剛性の高さです!同じ時期に日本上陸を果たしているアルファロメオスパイダーT.Sと比較して、あきらかに剛性が高いのです!

 それはコーナーリング時にも同じで、この手のオープンカーとしては剛性が高いと言えます。

 又、エンジンに関して言うと、1800cc、DOHC、16バルブと普通のエンジンですが、1トンをわずかに越えたくらいの軽いボディと合間って、元気な走りを約束してくれます。

 又、イタリア車では考えられないのですが、シフトのストロークがかなり短く、ユーノスロードスター並のクイックシフトが標準装備になっています。

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 良いことばかりのバルケッタですが、唯一不満があるとしたらエンジンです。

 エンジンこそがイタリア車の命!色気のないエンジンは、遅いエンジンよりもダメ!という持論の私にとっては、少々色気に欠けるエンジンが残念なのです。

 先ほども言ったように走ることに関しては問題はないのですが、味付けと言うか、表情と言うのかアクセルを踏み込んでいくにつれて、音も、フィーリングも変っていき、一気に吹けあがり昇天する感じが薄いのです。最初から最後まで、真面目に働く一本調子のエンジンとでも言いましょうか。

 外見は完全な遊び人なのに、付き合ってみるとすごく真面目な人だったと言う感じとでもいいましょうか、購入したら何らかの手を打ちたいですね。

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 初期モデルでは、運転席のみのエアバックでグローブボックスがありました。ただでさえ物を置くスペースがないバルケッタにとって、唯一物がしまえるところだったのですが、すぐに助手席にもエアバックが装備され、シートの間にある小さいコンソールのみになってしまいました。

 内装で驚いたのが何とフロアにカーペットが無いのです!?フロア全体がプラスチックのカバーで覆われているのです!ようやく雨漏りに対して対応したのか?個人的には歓迎すべき点だと思いました。

 ひとつ欠点とすると、フロアマットが滑りやすいことでしょうか。

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 これから中古車を購入する場合、気をつけなければならないことがいくつかありますが、まず頭に入れておきたいのが、年式、走行距離などのスペックを信用しないと言う事です。

 私が多くのバルケッタを見てきて感じたのが、年式や走行距離とは関係なく非常に個体差が激しい車だということです。

 逆に、初期モデルの96年式でも、前オーナーの乗り方で非常に良いコンディションの車もあるということです。全体的に言えるのですが、年式が新しいわりにコンディションが悪い個体が多いのも特徴です。

それでは、どんなところに注意すれば良いのでしょうか?

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 外側から話をすると、誰でも気にするのが幌ではないでしょうか。

 最初に破けてくるところは決まっています。ドアガラスの真中辺りを上に伸ばしていった延長線上にあたる幌の端辺りです。ここは、開閉時に折れ曲がるところでここが薄くなって穴が空いている個体をよく見ます。正直に言って、必ず破けてくると思われます。

 基本的にビニール製の幌を使っている為、あまり長持ちはしません。すでに幌を交換しているバルケッタも少なくありません。

 幌の交換ですが、ディーラーで作業をすると幌だけでは部品としてでないため、骨組みも含めて20万円以上すると聞いたことがありますが、純正部品に拘らなければ、はるかに安いものが手に入ります。

 そのときにメルセデスベンツなどでも使用されているジャーマントップという布製の幌に交換すれば、見た目もかなり良くなって、寿命も長く出来ます。

 リアスクリーンだけを交換することもできますので、交換をお考えの方、ディーラーに持ち込む前に是非ご相談下さい。

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 オーナーにとって、バルケッタに乗る最大の理由であるボディデザイン。

 ただし、メンテナンスとなるといささかそのボディ構造が裏目に出ます。前も後ろも左右フェンダーが一体になっているため、板金などをする場合、どうしても部分的に安くは出来ません。

 又、色焼けに弱く、自然にグラデーションがかかっているバルケッタが非常に多いです。幌同様、新しい車なのにオールペイントをするケースも少なくありません。

 購入後、実費でやると非常に高くつきますので、良いコンディションの個体を購入してください。

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 機関的には、エキゾーストマニホールドの遮熱板が良く割れます。部品自体はそんなに高いわけではないのですが、作業時に電動ファンを脱着したりしますので、工賃が意外とかかります。

 エアコンも壊れている個体が少なくありません。エンジルームを覗くと見えるのですが、エアコンガスを補充するための取りつけ口が、細長い棒状で下から生えています。この棒状のものを支えていないせいか、振動で根元から折れてなくなっている固体もあります。必ず、エアコンが効くのかをチェックしましょう。

 他には、調整式のクラッチワイヤーを調整しないで乗っていると、クラッチが切れずらくなりますので、定期的に調整をして下さい。

 ガソリン臭いのも、バルケッタによくあるトラブルですが、以外とお金がかかりますので必ず確認しましょう。もしも、購入しようとしているバルケッタがガソリン臭い場合は、ショップにいって必ず修理してもらうことを確約してください。

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 さすがに最近の車ですから、色々書いてきましたがあまりビビらないで購入しても構いません。

 ただし、他の車よりもオーナーのつかい方やメンテナンスの仕方でどうにでもなる車ですから、購入された場合はメンテナンスが信用出きるショップできちんと整備をして下さい。

カッコをつけたいのなら、それなりの心構えと、お金と、手間を惜しむな!!!!!